コツコツ続けること

2016年後半,続けてきたことが芽吹く様をたくさん観察した.挙げだすとキリがないけど,みんな見えないところでコツコツやってるんだな...自分にとってのそれは研究と自炊録くらいのことですが,昨年の芽吹きを励みにして,今年も腐らずにコツコツ続けることを頑張ります.

前回紹介したPodcast番組「心理学ニュース」にまた出演しております.参考記事

オンラインで聞けるアーカイブ(公式にはiTunesのポッドキャストで配信)
http://www.podcastchart.com/podcasts/-9cd4c50c-2eef-48e0-a3a3-4a9941cc9a6a

「心理学ニュース」WEBサイト(Facebookページ)
https://www.facebook.com/shinrigakunews/

第17回「あなたは私を友達だと思ってくれますか?」にまた助っ人として出演.前回と同様に僕はあまり話せていませんが,良い内容になってます.スキマ時間にぜひ.

心理学ニュース(Podcast)出演

先日,知り合いの研究者が配信しているポッドキャスト番組に出演してきました.その名も「心理学ニュース」.

学術論文などで発表された最新の心理学的知見を元に4人の研究者がトークするという内容です.専門的な議論というよりは,気がついたことや感じたことをざっくばらんに話し合います.紹介される最新の知見はもちろん,心理学者ならではの意見や洞察も楽しむことができます.一回が15分から20分程度のコンパクトな構成であるのもポイント.スキマ時間でも聞きやすいです.

オンラインで聞けるアーカイブ(公式にはiTunesのポッドキャストで配信)
http://www.podcastchart.com/podcasts/-9cd4c50c-2eef-48e0-a3a3-4a9941cc9a6a

「心理学ニュース」WEBサイト(Facebookページ)
https://www.facebook.com/shinrigakunews/

僕は,第16回「スケーター on the VR ice」に助っ人出演しています.僕は緊張したのかあまり喋れていないですが,自由な雰囲気がよく伝わる回になっていると思います.

インターネットラジオのradikoが提供するタイムフリー機能がとても便利で,近頃ラジオをよく聞くようになりました.それもあってラジオパーソナリティに関心があったのですが,改めてラジオパーソナリティはすごいと感じました.言葉だけで自分の考えを伝えることの難しさは想像以上で,そもそも考えを文章にして省略せずに口にすることや,途切れないように会話を続けることだけでもかなり難しい.

それはともかく,この番組は去年の3月から定期的に配信を続けていて,今後も隔週で土曜日に更新されていきます.自分は中の人ではありませんが,心理学がコンテンツとして楽しんでもらえることはありがたく思います.気に入ってもらえたら継続してチェックしていただけるとうれしいです.

以上,「心理学ニュース」というPodcastに出演した話でした!

論文紹介:リズムは信頼の肝心かなめ

あけましておめでとうございます.2017年は,学術論文の紹介で始めさせてもらいます.初めに断っておきますが,以下の内容はあくまで論文を読んだ僕個人のまとめですので,個人の解釈による部分も含まれます.なるべく主旨から外れないよう努力はしていますが,内容の正確な理解のためには論文そのものを確認する必要があることをご理解ください.

(書誌情報:著者名,発行年,タイトル,掲載雑誌,号数・ページ数,DOIコード)
Knight, S., Spiro, N., & Cross, I. (2016).
Look, listen and learn: Exploring effects of passive entrainment on social judgements of observed others.
Psychology of Music, 1–17.
https://doi.org/10.1177/0305735616648008
(タイトル日本語訳…見る,聞く,学ぶ:受動的な同期が,観察した他者に対しての社会的判断に及ぼす影響を探る)

この研究では,受動的な同期を,「動きとリズムがあっている人物を見ること」ということとし,社会的判断を,「対象人物が信頼できるのかどうか」ということとしている.背景のリズムと自らの動きがあっている人/あっていない人をそれぞれどの程度信頼できると判断するのか,ということがこの研究の主眼である.

ひとつの実験がこの研究で行われた.参加者は11種類のビデオクリップを繰り返し見せられた.それぞれのビデオクリップには,女性が一定の速さで歩いている様子が映されており,そのBGMとして4つの音が用意されていた.映像の人物が歩くリズムを基準にして,遅い/同じ/早いリズムの単純なドラムビートと,リズムを持たないノイズとの4つである.このドラムビートのリズムによって,背景のリズムと自らの動きがあっている人/あっていない人という条件を設定した.具体的には,1. シンクロしているビート条件,2. シンクロしていないビート条件,3. そもそもリズムがないノイズ条件の3つに分けられた.

ひとつのビデオクリップの再生が終わるごとに,映像に関する質問が表示された.例えば,花束を持った人物の映像だった場合は,このようなものだ.
「この人物はどこへ向かっているでしょうか?次の1と2からお選びください.1. おばあさんの家へ花束を届けに行く,2. 不倫相手の家へ花束を届けに行く」
このように,映像の人物が良い意図を持っているか,悪い意図を持っているかを二択で選ばせたことで,多少強引ではあるが,人物に対する信頼を判断させた.

論文の著者たちは,次のような2つの仮説を立てたうえで,この実験を行ったようである.
1. シンクロしていないビート条件よりは,シンクロしているビート条件のほうが,良い意図を持っている(=信頼できる)と判断しやすいだろう.
2. そもそもリズムがないノイズ条件よりは,シンクロしているビート条件のほうが,良い意図を持っている(=信頼できる)と判断しやすいだろう.

統計的な分析の詳細は原典をあたってもらうとして,結果の概要をまとめると,以下のようになった.
1. シンクロしているビート条件 ≒ 3. そもそもリズムがないノイズ条件 > 2. シンクロしていないビート条件 の順に信頼できる程度が大きかったのである.
仮説1は支持されたが,仮説2は支持されなかったという結果になったと言えるだろうか.ただ,仮説にこだわらずにこの結果を説明すると,「背景のリズムと自らの動きがあっていない人に対して,あまり信頼できないと判断する傾向が見られた」ということになる.

そもそも著者たちは,「背景のリズムと自らの動きがあっている人を,より信頼するだろう」という予測を立てていたわけであるが,まったく逆で,「背景のリズムと自らの動きがあっていない人を,あまり信頼しない」という結果が出たのである.この結果を次のように解釈できる.「行動を見るにあたって,リズムにあった動きをすることは,信頼するための大前提であって,信頼に対して特に影響がなかった.ただ,リズムに合った動きができないことは,この前提が崩れるので,信頼の程度を下げた.」つまり,リズムと動きがあうことは,もとからある信頼を増幅させる手段ではなく,そもそもの入り口である「信頼できるかできないか」を判断するための基準である可能性が示されたと考えられる.その入り口からどのように信頼を育んでいくのか,その過程を検討する研究が待たれる.

今回の論文紹介は以上です.わかりにくい部分があれば,それは僕の悪筆によるものであって原典によるものではありません.論文にアクセスできない場合は,ご連絡いただければ僕の可能な範囲で対応させてもらいます.質問などもご連絡いただければ,同様に対応するのでお知らせください.

今年はこのような活動もコツコツと積み重ねていきたいと考えています.今年もどうぞよろしくお願いします.